シャッターの向こう側。
 そしてリビングに落ち着いて、不機嫌そうに無言の宇津木さんが、

「寝起きは駄目なんだ」

 ポツリと呟いた。

「はい?」

「……だから、寝起きは全く駄目なんだ」

「何が」

「朝飯」

「…………」


 はぁ?


「徹夜明けなら食える。けど、寝て起きた場合、飲み物以外が受け付けない」

 ぼそぼそと言われた内容にパチクリした。

 え。何?

 朝ご飯がダメって事?

 もしかして、泊まりの時に徹夜していたのは朝ご飯の為?

 そういえば、出張の時も朝はコーヒーだけだったような?

 低血圧?

 低血圧?


 てか……


「なんで言わないんですかっ!」

「なんでもだ」

「駄目なら駄目で、そーいうもんかで終わる話じゃないですかっ!」

「言えるか」

「言わないとダメじゃないですかっ!」

「楽しそうに朝飯の買い物してるお前見て、言えるかっ!」


 ん?


 あれ?


 ぉおう?

 私のせい?


「…………」


「…………」


「すみません」


「いや、謝る事じゃないが……」


 何となく気まずくなって、もじもじしちゃうかも?


 だって、ねぇ?

 彼氏がいたら、手料理くらい作りたいじゃないか。

 毎日疲れてるの知らない訳じゃないし、作りたいじゃないか。


 だけど……

 だけどさ……


「別に、お前の料理が嫌いな訳じゃない」

 ボソリとした呟きに、顔を上げる。

 足を組み、その上に頬杖をつきながら、そっぽを向いてる宇津木さん。

 その視線が、ちらっと私を見て、またそっぽを向かれる。


「玉子焼きは好きだ」

「……別にいいですよ。慰めなくても」

「慰めなくても、玉子焼きは好きだ。弁当は旨かった」

 弁当?

 キョトンとすると、溜め息をつかれた。
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