シャッターの向こう側。
「え……えへ?」

「またろくでもない事を考えていたんだな」

 うるさいよ!

 あんたの方が100万倍もうるさいよっ!

 静かだけどうるさい………


「寝てなきゃ駄目じゃないですかっ!」

「朝よりはいい。それに喉が渇いた」

「そんなもんは言ってくれればいいんです! ポ〇リだって買って来てるんですから!」

「珍しく気が利くな」

 そう言って、また寝室に戻って行く。


「…………」



 ウキ───!!!!


 この人はどうして、こう一言多いんだっ!

 どうして、明らかにいらない一言を言いたがるんだっ!

 病人なら病人らしく、どうしておとなしく寝ていられないんだっ!


 たくさん思う事はあるけれど、相手は一応病人だ。

 そこはぐっと押さえよう。


 私って、大人だ!


 ペットボトルを冷蔵庫から取り出して、また横になっている宇津木さんを見下ろした。


 ……顔が赤い。


「大丈夫ですか?」

 片目を開けながら、宇津木さんはペットボトルに手を伸ばす。


 ゆっくりと飲む姿を見ながら、傍らに腰をかけた。


「お薬も買って来ましたけど」

「飲んだ」

「でも……」

「寝て、汗をかけば治るだろ」

「こじらせたら大変ですよ?」

 ペットボトルを返してきたから、受け取ってキャップを閉める。

「ねえ、病院に行きましょうよ」

「大丈夫だ」

「大丈夫に見えない」

「少し寝てれば良くなるから」

「病院にいけば、もっと早いですって」

「お前も病院は嫌いだろうが」

「私は私!」

「……怒鳴るな」

「だって……っ!」


 また声を上げたら、カバッと宇津木さんは起き上がった。



 起き上がって……



 あれれ?
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