シャッターの向こう側。
 気がつかなかったけど、なんか好みの形だ。

 直径は5・6センチくらい。

 蝶の形を模っている。


 ……うわぁー。


 こんな目立つデザイン、何で今まで気付かなかったのかな!?

 そう思って、視線を横にすると今度は花のレリーフに気がついた。

 丁度手すりの端々に、何の花かは判らないけど同色の銀のレリーフ。


 お花畑に、蝶?


 そう思って天井を見て、今度は目を丸くした。


 ……太陽?


 天井から射す照明。

 その影が、中央に円形周りは曲線を描くギザギザ。


 どう見ても、太陽だよね……


 花に、蝶に、太陽……?


 うーん。

 何か意味があるんだろうか?


 ロビーに着いたので降りながら首を傾げる。


 結構、凝り性なんだな……


 ま、考えてても仕方がないか。

 疑問は保留にしてカフェに向かうと、にこやかな坂口さんだけが居てニコニコと手を振っていた。

「あれ? 宇津木さんは……?」

「ここの広報担当に交渉中」

 笑顔のままで言いながら、メニュー表を私に差し出してくる。


「宇津木の奢りらしいから、高いの頼むといいよ。夕飯まだなんでしょう?」

「あ。はい」

 メニューを開いて、悩む。

 ……交渉ってなんの交渉なんだろう。

「ああ。なんか不思議そうな顔だね」

 坂口さんの声に、ちらっとメニューから顔を上げた。

 ……そんなに顔に出てたんだろうか?


「わっかりやすいよね。君」

 ニコニコ笑いながら、ソファータイプの椅子に寄りかかり足を組む。

 すごく足が長いんですね……

「なんていうか、宇津木がメールでは写真を送れないとか言って来たから、俺がこっちに来たわけ」

「はぁ……」

 確かに写真をプリントして、コンピューターにスキャンしてデータ化するのは面倒だけど、出来なくはない。

 首を傾げてると、坂口さんは笑い声をあげた。
< 38 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop