シャッターの向こう側。
「あっははははは!」

 イキナリの爆笑に、目を丸くして坂口さんを見た。

「ピヨピヨって……何!?」

 面白かったのはそこか!?

 しかも解んないのに笑うって何!?

「宇津木から……そんなかわいい言葉が飛び出してくるとは思わなかった」

 坂口さんの言葉に、宇津木さんは凍りつきそうな視線で彼を見ている。

 まぁ……

 そう言う意味でなら、笑えるかもしれない。

 宇津木さんて、一見すると面白いこと言いそうにないタイプの人間だもんな。

 大の大人が〝ピヨピヨ〟なんて言うんだから、ある意味可笑しいかもしれない。

 うん。

 とってもおかしい。

 言われた方は、たまったもんじゃないけど。


「お前は何を今更納得してる」

 おぉ。

 冷たい視線が私にまで……!

「いえいえ。特にこれと言って悪意はないです」

「あったら怖いだろうが!」

「宇津木さんより怖くないですよ」

「ど・う・い・う意味だっ!!」

「いたっ! イタイイタイ!!」

 頭を挟まれてグリグリされながら、涙目で訴える。

 そんな私たちを、坂口さんは爆笑してお腹を抱えていた。



 結局、何故か強制的にアサリとほうれん草のスープスパゲティーを注文された。

 ……もしかしたら、宇津木さんはパスタ好きなのかもしれない。

 どっちでもいいけど。


「……で、お前さんが及第点をつけた写真は、まだたった2枚?」

 スパゲティーを食べながら、坂口さんの言葉に宇津木さんは淡々と頷く。

「遊戯施設も撮り直しがほとんどだな。写真を撮るのは俺は素人だが、使いたいと思ったのは2枚」

「ふぅん? それでもマシな方かねぇ」

 ……てか、この二人は仲がいいのか、実は同じ性格なのか。

 随分と痛い事を、本人を目の前にしてズバスバ言ってくれる。


「あ。ピヨピヨちゃんが落ち込んだ顔をしてるけど」

 坂口さんは心配そうな顔をしてくれたけれど、宇津木さんは鼻で笑った。

「一度、突き落としてやれ」

 ……このサドめ。

 キッと睨むと、宇津木さんはニヤニヤしているだけだ。

 ……なんか、人生の底辺に居るような気分になってきたぞ。
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