シャッターの向こう側。
 ここは、雨降りに撮る場所じゃない気がする。

 ……なんだかとっても侘しくなるし。

 どうせなら、もうちょっと晴れている時の方が、輝かしくていいな。

 ……下手すると、簡単に『失恋の広場』になりそうだし。


 それじゃ、ここの広報部の人に怒られてしまいそうだし……



「別を探そう」

 呟いて歩き始めた。


 なんて言うか、最近は独り言が増えたような気がする。

 ……ちょっと悲しくなってきた。


 深く考えるのはよそう。


 しばらくそうやって歩いたり、バスに乗って移動したりしたけど、どうにも〝これだ!〟という場所に巡り逢えずに、お昼過ぎにホテルに戻って来た。

 個人としては、撮りたい場所があるにはあったけど、パンフや広告向けじゃないのは解りきった事だしな~。

 とほとほ歩いていたら、坂口さんに鉢合わせした。

「お帰り、ピヨちゃん」

「……ピヨちゃんて、やめませんか?」

 私の言葉に、坂口さんは目を丸くする。

「あれ。そうなの? でも、タマゴちゃんよりマシじゃない?」


 ……もっと意味が不明なんだけどっ!


 それが伝わったのか、坂口さんは爆笑した。

「君って反応が解りやすいね!」

 さわやかニコヤカに言われても、嬉しくない。

「だって、君はプロの雛でしょう? 偉いよね~。ちゃんと毎年フォトコンに出品しているって聞いたよ?」


 はぁ……まぁ……


「今年は一次も通りませんでしたけど」

「じゃ、去年は二次審査まで行ったの?」

 目を丸くする坂口さんに、首を傾げた。

「アマチュアの部門では……」

 その後、三次、最終選考となるから、入賞なんてまだまだ手が届かないけど。

 ぶつぶつ考えていたら、坂口さんは優しく微笑んでくれた。

「それでも凄いじゃないか。確か、あれだよね、新聞にも4000展の応募とかで騒がれてたやつでしょ? 今年は少なかったみたいだけど」

 よく知ってるんだな。

 驚くと、坂口さんは肩を竦めた。

「宇津木の様にアーティストを気取る気はないけど、僕も少なからず業界の人間だからね」

 ああ……まぁ。

 そうかも……
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