シャッターの向こう側。
 ツンとそっぽを向いて、手荷物のバックを持ち直す。

 それからスタスタと負けないように歩いて、金属探知器もパスすると無言のままで案内通りのゲートに向かい……

 しばらく歩いてから、背後から宇津木さんが呟いた。


「おい、ひよっこ」


 ……私はひよっこじゃない!


「向かうのは5番ゲートだな?」

「そうですよ。案内見てないんですか」

「……お前、方向音痴か?」


 言われてハタリと足を止める。


 ……あ。


 向かったつもりでいた。


 私の向かった方角に見えたのは8番ゲート。

 背後を振り返ると、7番ゲートの数字が見えた。


「なんで引き止めないで、ついて歩くんですか」

「引き止めた。仕方なく」


 ……仕方なくですか。

 そして服の襟を掴まれ、スタスタと来た道を戻り始める。


 あのさ。

 猫じゃないんだからさ……。



 私が不機嫌な顔をしてるのも全く気にした様子もなく、宇津木さんはゲートを通り抜け、私を座席まで引っ張っていった。

 その間、私はいい晒し者。


 てかさ、誰か止めてよ、普通。


「ちゃんとシートベルトくらい付けろよ」

 宇津木さんに言われて、ブツブツ文句を言いながらシートベルトを着用する。


 まったく!

 親父かって言うの!!


 窓側の席で、窓の外を眺めながら頬杖をついた。

 窓の外、遠くに見える滑走路。

 昼間はあるだけに見える誘導灯。

 それから、整備員の繋ぎを身につけた人達。



 ……ああ。


 皆しっかり仕事をしているな。



 いつからだろう?


 仕事を〝こなす〟様になったのは。


 食品の写真を撮る時にはフードコーディネーターの人がいて、モデルにはスタイリストが付いていて……

 建物は、あまりものを語らないと感じてしまったのは……



 それすらも、もう覚えていない。



 この会社に入って2年。



 ……その2年で、私は何をして来たんだろう。



 そんな事をボンヤリ考えているうちに、すっかり眠ってしまっていた。















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