シャッターの向こう側。
「お前って……」


 ん……?


 宇津木さんの言葉に顔を上げる。


「根性だけは、ハイエナ並だよな」


 思わず突っ伏しそうになった。


「宇津木さんっ!」

「何?」

「少しは言葉を選ぶとか、そう言った配慮はないわけですか!」

「ん~。あまりないな」

 飄々と答える宇津木さんに、頭を抱える。


 と言うかしろっ!!


 今すぐしろっ!!

 頼むからしてくれっ!!


「私、宇津木さんの彼女さんに同情したくなってきました」

 こりゃ普段からこんな感じなんだろうと思ったら、どれだけ彼女さんは大変なんだろうか!!

「お前に心配されるいわれはないぞ?」

「心配じゃなくて、同情ですっ!! ど・う・じょ・う!」

「……いや。お前に同情される女が可哀相だろ」

 くぉら!

 それはどう言う意味だ!!


 しっかしまぁ、よくこれだけポンポンと憎まれ口がたたけるもんだわね。


 人情としては、この首をキュウッと、こう、締め上げたく……


 私の視線を感じてか、宇津木さんは椅子ごと後ろに下がった。


「ピヨピヨ。お前、よからぬこと考えただろう?」

「いえ。きっと人の為になりそうな事を考えていたと思います」

「うわっ……なんか知らんが、自分を正当化してる」

「したくもなりますからっ……!!」

「ちょっとちょっと、おふたりさん」

 のんびりした声が聞こえてきて、私と宇津木さんは顔を上げる。

 そこに、今日はトマトサラダの坂口さんが立っていた。


 ……とても困り顔で。


「一昔前の、猫とネズミの喧嘩じゃないんだからさ。少しは朝の静かな一時を楽しんでみようとか、考えないわけ?」


 猫とネズミ?


「じゃ、私が猫ですか?」

 と、言う私に、宇津木さんが何故か吹き出した。

「あ~。配役を言ってる訳じゃないと思うんだが」


 だって、何を言ってるんだか理解できないし。


「昔やってたアニメだよ~?」

 坂口さんは苦笑しながら席につき、トレイを置くと小首を傾げた。
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