シャッターの向こう側。
「いつも猫がネズミを追いかけ回すんだけど、ネズミに仕返しされて、こてんぱんにされるという……」

「ええ~? じゃ、ネズミがいいです」

 私の言葉に、宇津木さんが眉をしかめて見せた。

「いや。ピヨピヨの場合、断然ネコだろ」

「うん。そうだよね」

「いや! ネズミがいいですから!」

「猫でいいぞ、猫で」

「そんなの嫌ぁ~!」



 そんな、一見すると意味不明の会話を続けながら朝食をとり。

 宇津木さんは打ち合わせに出かけ、坂口さんは会社に連絡するから、と席を立ち、私は仮眠する為にそれぞれ別れた。




 それから14時。

 携帯のアラームに起こされて、むっくりとベットから起き上がる。


 ……頭が割れる様に痛い。

 何て言うの?

 私は二日酔いです!

 ……くらいな勢いで痛い。

 名誉の為に、仕事中は飲まないことにしてる。


 ……誰に言い訳してるか解らないけど。


 昨日は雨の中でウロウロしてたし、風邪でもひいちゃったかもしれないなぁ。

 荷物の中からお薬ポーチを出して鎮痛剤を取り出す。

 コロンとした丸い錠剤を、備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して飲んだ。


 ……ひんやりして美味しい。


「………って」

 こんな事をしてる場合じゃないのよね。

 立ち上がり、シャワーを浴び、着替えを済ませてから、タオルでガシガシ髪を拭いて、近くの椅子に座る。

 なんとなく、頭痛も治まってくれたみたい。

 化粧をしてから、バックにお財布、スマホ、撮り終わったフィルムを入れて部屋を出た。

 念のため、現像の帰りに薬局でも寄っていこう……
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