シャッターの向こう側。
「はい」

 という返事と、ドアの開く音。


 と、同時に目が合うと、いきなりドアを閉められた。


「…………」


 ……何故。


「ちょっと宇津木さん! その反応は何ですか!? あまりにも失礼じゃありません?」

 ドアをガンガン叩いて、ついでに足蹴りも加える。

 ドアが少し汚れたのを、内心でホテルの人に謝った。


「宇津木さん~!!」

「お前な! いきなり来るとはどう言う事だ!」

「だって、一階にいなかったから」

「用があるなら電話しろ!」

「え~。めんどくさいじゃないですか。写真見せるだけなのに」

 ドア越しに怒鳴りあって、腕を組んだところで、再度部屋のドアが開いた。

 そこには不機嫌そうな宇津木さんの顔。

「……とりあえず、騒ぎは御免だから、入れ」

「お邪魔しまーす」

 いそいそと部屋に入って、ちらっと内装に視線を走らせた。


「…………」

 灰色のカーペット。

 黒い2人掛けのソファーに、ガラス張りのローテーブル。

 内装は色違いってくらいで、大差はない。


 ないけど。


「生活感のない部屋ぁ」

「人の部屋に押し入って、何だその感想は」

 だって普通は少しくらい荷物とか、携帯の充電コードとか、飲みかけのジュースとかあってもいいと思う。

「ここにホントに寝泊まりしてます?」

 不思議に思って振り返ると、白いTシャツにジーパン姿、素足で髪が濡れてる宇津木さんと目が合った。

「……シャワー浴びてましたか」

「お前、さっきの姿を見てどう思ったんだ?」

 宇津木さんは入口の壁に腕を組みながら、身体をもたれさせている。

 どうって……

 言われて見て考える。



 あ。


「さっきは上半身裸でしたね!」

「お前、本当に女か?」

 睨まれて、頭をかいた。

 宇津木さんの上半身に、女性として萌えないのは確かだったかもしれない。

「そんなのはどうでもいいんで、写真」

「どうでもいいのかよ」

 どうでもよくないのかよ?

「自信満々ですねぇ。宇津木さん」

 言った瞬間、パカンと頭を叩かれた。
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