シャッターの向こう側。
 電話が終わって、無言で目の前に座った宇津木さんをマジマジと見る。

 髪からポタポタと滴が落ちてるのが、何だか綺麗だけど……

「宇津木さん。髪を乾かさないと風邪ひきますよ」

「見張ってないと、お前は何をするか判らん」

 この人は、私を一体何だと思っているんだろう……

 ぼんやりしているとノックの音がした。


 宇津木さんが立ち上がって、ドアを開けに行く。


「あはは。ホントだ、神崎ちゃんがいる」

 明るい声が聞こえ、ニコニコと坂口さんが顔を出した。

「はい。お土産」

 ホテルの売店らしい、ビニールの袋を渡されて、キョトンとする。

「お土産?」

「おにぎり。薬飲むんでしょう?」

 そう言った後ろから宇津木さんがミネラルウォーターのペットボトルを差し出してくれる。

「お前が食ってる間、写真を見せてもらうから」

「あ。はい」

 ペットボトルを受け取ってテーブルに置くと、荷物の中から写真を取り出して、それを宇津木さんに渡した。

「どちらかと言うと、ホテル内の方が多いです」

「……そうだろうな。雨降りに外をまわっても、大した収穫にはならなかったろう」

 ……その通りだけど。

 ソファーに座る宇津木さんを軽く睨んでから、坂口さんのお土産を見てみる。

 鮭のおにぎりに、梅干しのおにぎり、おかかに、シーチキンに、海老マヨに、いくら、たらこ、明太子に、高菜に……


 私ってば、どれだけ大食漢だと思われているんだろう……


「あ。好きなの取って、後は俺たちに回して」

 坂口さんはニッコリと笑って、宇津木さんの見ている写真を覗きこんだ。

 ……この人は、とても気を使ってくれる人らしいな。

「ありがとうございます」

 高菜のおにぎりを取って、パッケージを開けた。

「海苔を落とすなよ」


 うるさい潔癖症め。


 宇津木さんの言葉は無視しつつ、おにぎりを頬張る。

 もぐもぐ食べながら、宇津木さんが写真を2つに分けている様を眺めた。

 もしかして、使えそうなのと使えなさそうなので分けてるんだろうか……
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