シャッターの向こう側。
「まぁ、ちゃんと掛け合わなかった俺が悪いか」

 ブツブツと呟いて、宇津木さんは溜め息をついた。

「しかしな、お前」

「はい?」

「これは何だ?」

 言いながら、写真の山の中から、スッと一枚取り出してひらひらとさせる。

 そこには遊園地が写っていた。

 雨降りの遊園地。

 人も数えるくらいの遊園地。

 それでも動き続ける遊園地の遊具。

 雨に濡れ、黒く染まったコンクリートの水溜り。


「これはないだろう。これは」

 テーマパークの人気者──予定……のピンクのふわふわ子犬ちゃん。

 ……の着ぐるみさん。

 名前は知らない。

 知らないんだけど……


「誰が打ちひしがれた着ぐるみを撮って来いって言ったんだ?」

「面白いでしょう?」


 まるで地面の水溜りが、両手をついたふわふわちゃんの涙の様で、なかなかコミカルだと思うんだけど。


 うん。


 なんだかとっても哀愁☆


 ニッコリすると、宇津木さんが頭を叩いた。

「ふざけるな!!」

「やだな。真剣ですよ」

「これのどこがだ!」

「ちゃんと哀愁を感じるでしょう?」

「哀愁じゃなくて夢を撮って来い! ここはテーマパークなんだぞ!」

 宇津木さんの言葉にニヤリと笑う。

「なるほど、これで判りました。宇津木さんのここのイメージは〝夢〟なんですね」

 いまいち、宇津木さんのイメージがつかみ切れてなかったんだよね。

 さすがに好き勝手撮って来いとは言われても、全部が全部没になったら目も当てられないし。

 私のイメージと、宇津木さんのイメージでずれが出るとそうなっちゃうだろうし。

「了解です」

 ニコニコ呟く私に、宇津木さんは情けなさそうに片手で顔を隠した。

「お前なぁ……」

「だって、アートディレクターの意見も聞かなきゃ」

「だから、お前の好きに撮って来いって言ってるだろうが」

「好きに撮ってきますとも。でも……」


 私は腕を組み、可愛らしく小首を傾げて微笑んだ。


「宇津木さんて、隠れロマンチストですか?」

「お前は一言多いんだ!!」


 この叫びに、坂口さんも大爆笑だった。















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