シャッターの向こう側。
 今日はとってもいい天気だし。

 地上の風も微かに冷たいけど、凍える程じゃないし大丈夫!

 恐らくシャトルバスの停留所に向かう家族連れを眺めながら、何となく荷物を抱え直した。


 シャトルバスに乗ってもいいけど……


 と、視線を前方に向ける。


 ホテルの正面には、色とりどりの花が咲き乱れる大きな通り。


 今日の予定は晴れた日の遊園地。


 ちなみに、この間撮った雨の日の遊園地はボツになった。


 まぁ、無理もない。


 イメージが〝夢〟じゃなぁ。


 あんなロマンチックな答えが返ってくるなんて、それこそ〝夢〟にも思わなかったんだけど。


 青い空に白い雲が流れる様を見送り、一人で頷いた。


 うん。


 歩いて行っちゃおう。

 ……と、


 歩きかけた時、背後から服の襟首を掴まれた。

「今回は、首締まりませんでした!」

「何を勝ち誇っているか解らんが、お前はバスに乗らないのか?」

 身体を捻って振り返ると、サングラスをかけた宇津木さん。

「……なんでいつも背後から近寄って来るんですか?」

「別にコソコソ近寄ってる訳じゃないんだが。呼んでも聞こえてないお前が悪い」


 あれ?


 今、呼ばれたかな?


 全く聞こえてないけど……?


「呼びました?」

「呼んだ。お前はいつも呼ばれても気付かないよな」

 いつもって言われても、全然知らないけど。

 とにかく、こんな風に強制的に呼び止められる事は今までなかったと思う。


「……それで、なんですか」

「ああ。坂口は?」

 襟首を離されて、ちゃんと振り返りながら服を直した。

「えっと……何だか用事が出来たとかで、お部屋に戻りましたが」

 宇津木さんは少し考え込む様な表情をしてから、腕を組んだ。

「ふぅん? それじゃ仕方ないか」


 ……何が?


「俺も、これからまた広報部と打ち合わせ入るからついていけないが……」

 別に、付いてこなくても……

 思っていると、宇津木さんはジャケットの内ポケットから何やら折り畳んだ用紙を取り出した。

「渡しておく」

 ……と、渡されて、首を傾げる。

「じゃあな」

「あ。はい」

 ホテルに戻って行った宇津木さんを見送って、姿が見えなくなると渡された用紙に視線を落とした。
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