シャッターの向こう側。
「お前って、あまり組織的な部分は気にしない奴なんだな」

 組織的な部分?

「お前にも何人か、仲のいい同期はいないか?」

「いますよ?」

 佐和子は同期の中でも一番仲のいい友達だ。

 私はフォトグラファーで、あの子は他の部のグラフィック課にいるけど……

「つまり同期な訳ですね。なら、そんなにびっくりしなくてもいいじゃないですか」

 膨れて言うと、坂口さんがジュースを開けながら肩を竦める。

「ここ2・3年は、いつも俺、こいつと組んでやってるんだけどね……」

「何で、隣の席のお前が気付かないんだ」

 宇津木さんに目を細められて、天井を見た。


 ……えへっ

 だって、私は外勤が多いし。

 しかも、宇津木さんて苦手だし。

 すぐ揚げ足取るし。

 口煩いし?

 そりゃ~関わらないに越したことはないと思ってたし。

 出来るだけ視界に入れないようにしてたから?


「…………」


 そんな理由は言えないね。

 言ったらどんなお返しがやってくるか。

 なんていっても、私も言って良い事と悪い事の差くらいは知ってるし!


 うんうん。

 ちょっとは成長したじゃない。

 エライゾ! 私!


「……で? 何故そこでガッツポーズなんだ?」


 ……そんな事は気にしないで。


「ま。とにかく、これで謎は解けました。という訳で私は帰りたいと……」

 立ち上がりかけた頭を、押し戻される。

「ピヨ。飯は?」

 食べてないけど……

「こんな夜遅くに食べると、美容に良くないんです」

「美容なんて気にするタマか」

 すんなり却下され、坂口さんと一緒にルームサービスでおそばを食べることになった。

 私だって女の端くれだ、美容くらい気にする時もある!

 常日頃から……とは、口が裂けても言わないけど。

 十割蕎麦なんだそうな、少し固めのおそばを啜りながら、宇津木さんの部屋から見えた夜の観覧車を思い出した。

「そういえば、遊園地は何時に閉園なんですか?」

「だから、書類をちゃんと読めと言っただろうが」

 ……すみませんね。

 宇津木さんを睨んでいると、坂口さんは柔らかく微笑んで小首を傾げた。
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