シャッターの向こう側。
「確かアトラクションは20時までで、観覧車のライトは23時まで点灯してるんじゃなかったかな?」

「あ~。夜もやってるんですか。それは良いことを聞きました」

 ニコニコ坂口さんに微笑み返すと、宇津木さんはわざわざ私の座るソファーの端に腰をかけて腕を組む。

「夜のジェットコースターは、怖いかもしれないな?」

「乗るのは楽しいかも知れませんが、さすがに写真にすると黒いだけの景色ですよ」

 箸を振りつつ首も振ったら、宇津木さんはニヤリと笑った。

「なんだ。理解していたか」

「……どれだけ馬鹿にすれば気が済むんですか」

「馬鹿にしてる訳じゃない」

 あっさりと言い放ち、宇津木さんは軽く頷く。

「真面目に思った事を言ってるだけだ」

 ふぅん?

 キョトンとしていたら、坂口さんが吹き出した。

「うわ……っ! 何やってるんだよ!」

 宇津木さんが立ち上がり、私も坂口さんを見て首を傾げる。

 ……なんか、悶えてるけど。

 そんなに悶える程に楽しいことでもあったんだろうか?

「神崎ちゃん!」

「はい?」

「君は素直すぎ! よく考えてごらんよ。馬鹿にしてる訳でもなく、ただ思った事を言っている……って事は、真面目に言ってるって事じゃないか!」

「はぁ……」

 だから真面目にそう思ってることを、言っているって訳でしょう?


 ……ん?


「つまり? 宇津木さんは、私が夜間のジェットコースターを乗りながら撮るだろうと……そんな常識はずれだと〝真面目〟に思ってるわけですか」


 余計に悪いじゃないかっ!!


「……気付かなかっただろうに」

 ポソリと呟いた宇津木さんを勢いよく睨む。

 そんな私に、坂口さんはクスクスと笑いながら片手を上げた。

「この天然ぶりは、冴子ちゃんに匹敵するんじゃない?」

 その言葉に、宇津木さんは首を振る。

「冴子はすぐ気付く」

「そうかなぁ? 似てると思うけど」

 ……冴子さんて、宇津木さんに何回か電話がきてる人?

「似てないって。だいたいそれじゃ失礼過ぎるだろう」

 宇津木さんはちらっと私を見下ろし、目を細めた。

「冴子に失礼だ」

 うんうん。

 そうだよ、人を比べるなんて……

 って……


 ウキ─────っ!!
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