シャッターの向こう側。
 宇津木さんを見て、小首を傾げた。

「どこか撮ってほしいとか、そういう所はありませんか?」

 宇津木さんは新聞をたたんで脇に置くと、珍しくぼんやりと外を眺める。

「大丈夫じゃないか? ピヨはなんだか余計な所まで撮って来てるし、使えそうな部分は押さえてある」

「……余計な所があってすみませんね」

 貴方は一言余計なんだよ。


 ……どこか慣れてきた自分に感謝だ。


「別に文句じゃないが」

「そうでしょうとも」

 単に本当に一言余計なだけで。

 カボチャサラダを食べ終わると、お皿を重ね始める。

 すると、坂口さんが楽しそうに笑顔で手を打った。


「じゃあさ。最終日くらい気晴らししない?」

 ……気晴らし?

 満面の笑みを浮かべる彼を、宇津木さんは腕を組んでちらっと見た。

「……考えてた」

「じゃ、決まり?」

 ニコニコ笑顔の坂口さん。

 この人は、笑顔で押しが強いよね。

「だが、気晴らしと言われても、何をするかな」

「なんでそこで悩むのかが、俺には解らないけど」

 私にも解らない。

 だいたいココは、いわゆるレジャー施設なんだから、遊ぶ所なんてたくさんある。

 子供向けのモノも多いけど、大人が楽しめる部分もあると思うな。


 限定〝恋人同士〟なら……


「俺、まだ遊戯施設の方には行ってないんだよね。生でうちひしがれるワンワン見てみたいし」

「……あれは偶然の産物ですから」

 てか、いい年の男性がワンワンて何よ、ワンワンって。

「てな訳で、決定!!」

 ニコニコ顔の坂口さんに、宇津木さんはうなだれた。



 ……て言うか、おい。

 どんな訳だよ。


 それでも楽しそうな坂口さんに急かされつつ、私たちは中央地区に来ていた。


「あれ乗りましょう!!」

 指をさした絶叫マシーンに、坂口さんと宇津木さんは微かに減なりした。

「お前、どれだけ絶叫系が好きなんだよ」

「神崎ちゃんて、ああいうの好きなんだ」

 もちろんっ!!

 それに気晴らしなら自分の好きなモノに乗るに限る。

「最初はのんびりしたのからにしろ」

「……じゃ、メリーゴーランド」

「却下だ」

 宇津木さんに言われつつ、デコピンをくらった。
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