シャッターの向こう側。
 するとどこか聞き慣れた着メロに、私と坂口さんが宇津木さんを見た。


 ……何故ベートーベンの運命?


 私たちが見守る中、宇津木さんはスマホを見て深い溜め息をつく。


「これが終わったらちょっと抜ける」

 坂口さんが眉を上げスマホを覗いた。

「何々? 冴子ちゃんメール?」

 何々、宇津木さんの彼女?

 興味津々で見ると、何だかとっても不機嫌そうな顔をしている。


 ……てか、彼女の連絡にそんなに不機嫌にならなくても。


「……まぁ、そうだな」

「冴ちゃんは相変わらずのトラブルメイカーだね」


 ……トラブルメイカーなんだ。


「たまに、あいつをどうにかしてくれ……と思う時がある」

「ハハッ……。でも、なんのかんのと言って、一番甘いのはお前だろう?」


 へぇ~?

 宇津木さんは彼女さんには甘いんだ。


 考えてみると、納得出来なくはない。

 宇津木さん、仕事中でも彼女さんの電話には出てるもんね。

 エライ傍若無人だけど。


 私だったら……


 まず、間違いなく逆ギレするな。

 うん。

 だってムカつくもん☆

 頷いていたら、ふと宇津木さんの冷たい視線と坂口さんの不思議そうな視線が向けられていた。

「……えと。何か?」

「一人で頷いてるから何かと」

「無性に叩きたくなった」

 坂口さんの一人で…は解るけど、どうして宇津木さんは叩きたくなるんだ?

 得体が知れない男だな……


 そんな感じで観覧車を降りると、私は坂口さんと行動を共にする事にした。

 ……さすがに、彼女との連絡についていく訳にもいかないしね。

 宇津木さんを見送った後、ふと目に入った売店を見て坂口さんの服を引っ張った。

「坂口さん。ソフトクリームの種類がたくさんあります!!」

 バニラにストロベリーに抹茶にチョコレート……薔薇に桜に梅は何となく解る。

 でも、昆布とウニとカニですか?

「珍しいね」

 坂口さんを見上げると、彼も同じメニュー表を見て笑っている。

「僕はウニにしようかな~」

 ウニ……やっぱり坂口さんて、勇気あるな。


 私はオーソドックスにバニラにして、二人で近くのベンチに座った。
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