シャッターの向こう側。
セピア

友達……もしくは酔っぱらい

******





 出張から帰って来た次の日。

 ちょうど土曜だったから、佐和子と昼間お茶をすることになった。

 ……普通は彼氏とデートするかも知れないけど。

 お互いに移動の疲れを癒そう……って感じで、まずは日曜日に会う約束をして空港で別れた。

 そんな出来事を、佐和子に報告した訳なんだけど。


 何故、フォークでチーズケーキを突き刺したまま、そこで固まっているのか解らない。


「マジ? あんた、坂口毅と付き合う事になってるの!?」

「なってるの……と言うか、なったの」

 坂口さんて、タケシって言うんだ~。


 なんて、感心しても仕方ないけど。


「坂口さんていい人だよ?」

「知ってるわよ! 佐和子の情報通をナメないでちょうだい!」

 いや……

 そんなけったいなモノ、一度たりともナメてかかるつもりはない。


「さすがに驚いたわ。あんたと坂口さんにそんな出来事が起こるなんて」

 ……私も想像すらしなかった。

「なんか、実感なんてないけどね」

 ポツリと呟くと、佐和子は思い出した様にチーズケーキを切り分け、深く頷いた。

「なんにしても良かったじゃない。あんたはしばらく彼氏もいなかった訳だし?」

「まぁ、居なかったよね」

 居ても居なくても……

「しかも、大口の仕事もちゃんと切り抜けた様だし、言う事無しじゃない」

 ……うん。

 まぁ……そうかな。

 だけど、本当に実感がないと言うか。


 学生時代のお付き合いって、付き合ったらだいたい一緒に行動するじゃない。

 登校や下校はもちろん一緒で、休み時間もいつも一緒で、メールや電話はしょっちゅうあって。

 うきうきウハウハときめきドキドキ☆



 ……実際、そんな事は過去数年遡ってもお目にかかったことはないけど。

 行動は一緒にしてたかなぁ……なんて。


 今、これが社会人のお付き合いの仕方なんだな……と、納得中?


「何なの。その冷めた感じ」

 佐和子に睨まれて、頭をかいた。

「しばらくぶりにお付き合いすることになったからかな?」

「この世の春じゃない! 坂口さんて、確かに宴会会長なんて言われてるけどイケメンよ!」

「うん。いいよね。足長いし」
< 83 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop