シャッターの向こう側。
「それこそお前には関係ないだろうが」

「先に関係ない話をしたのは宇津木さんでしょうが」

「そうか?」

「そうですよ」

「お前は、相変わらず遠慮を知らないな」


 ……どっちが。


 それに、宇津木さんに遠慮なんてしてたら、いいように扱われるだけじゃないか。

 大きく深呼吸して、フラッシュメモリに保存していた写真を画面に呼び出した。

 MP3の宣伝用の画像。


 この画像の影を消して……


 と、画像処理をしていると、宇津木さんが足を組んでこちらを見ているのに気がついた。

「それって、隣の仕事か?」

「え?」

「そのMP3なら……有野さんとこの仕事じゃないのか?」

「あ、はい。縁あって頼まれまして」

 これは坂口さんから回ってきて、頼まれたんだけど。

 有野さんが坂口さんの先輩とすると、宇津木さんの先輩でもあるわけなのかな?

 なら、知り合いな訳か。

 でも、何でそんな不機嫌そうな顔をされるんだろうか?

「2・3日見ないと思ってたら、また他部署の仕事してるのか、お前は」

「頼まれたら、するでしょ普通」

「そんなもん、あっちのグラフィックデザイナーに任せりゃいいじゃないか」

「……私の画像はいじらせません」

「お前はフォトグラファーだろうが。それに画像をいじるのは不得手だろ?」


 ……嫌いなだけで、不得手でもない。

 宇津木さんは目を細めて、偉そうに腕を組む。

「お前はグラフィックデザイナーになりたいのか? それともフォトグラファーになりたいのか?」

 え……それは……

「どちらかと言うと、プロに……」

「DPAを目指してる訳なのか?」

 デジタルフォトアートなんて、単語が出て来た事にポカンとした。

 コンクールだと写真を合成みたいに、画像処理してアーティスト性を競う部門があるけど……

 一般の人は余り知らない。

 ……まぁ、宇津木さんは曲がりなりにもデザイナーだから、知っていてもおかしくはないかも知れないけれど……

「どちらかと言うと……」

「違うだろうが」

 断定的に言われてムッとする。
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