シャッターの向こう側。
 確かにDPAでプロを目指している訳じゃないけど。

 何故、それを宇津木さんに言われなくてはならないんだ?

「そんな事、宇津木さんには関係ないじゃないですか……」

「全くない。だがな……」

 宇津木さんは何か言いかけて、言葉を止めた。

 それからおもむろに溜め息をつき、デスクの引き出しから黒いバインダーを取り出す。


 この人の行動と言動は、未だに読めた試しがない。


「隣の手伝いするくらい暇なら、これを手伝え」

 バサバサと黄色い封筒を2・3通渡された。



 ……これは、何?



 封筒を黙って見下ろすと、宇津木さんの淡々とした声が降ってくる。

「一通目、JGコミュニケーションのは7日後。二通目、D社のは10日後。三通目、A社のは30日後。期限はそれくらい。お前に任す」


 は……


「はぁあ?」

 思わず目を丸くしたら、不敵な笑みを浮かべられた。

「時間がないぞ? さっさと内容理解して撮って来い」


 内容理解して……


 撮って来い……



 撮ってこい~っ!?



「あ、あの。意味が不明確ですが」

 早くも自分のパソコンに向き直っている宇津木さんに、素っ頓狂な声をあげた。

「意味なら解るだろ」


 解るかぃっ!!


「コミュニケーションのは、新しい端末機のPR。D社のは新車売買のイベントパンフ。A社のは企業イメージのポスターだそうだ」


 や。


 だからそんな事を言われてもさ?

 解るようでもっと解らん。


「なんでそんな仕事を私に?」

「俺がディレクターだからだろ」


 だから意味が不明だって言うの!!


「だから、内容理解してとっとと撮って来いよピヨピヨ。俺はこれから会議だから」

 スッと立ち上がり、ニヤニヤ顔な宇津木さんは椅子を戻すと軽く手を振った。

「……例によって、俺からの指示はしないから。そのつもりで」

 口をパクパクさせている間に、奴はオフィスを出て行った。


 てか、そんな軽い口調で頼まれてもね?


「……………」

 封筒を眺めながら、思いきり顔をしかめた。















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