シャッターの向こう側。
「……だからって、俺に八つ当たりされてもなぁ」

 ランチタイム。

 待ち合わせをした訳じゃないけど、偶然にも同じ店に来ていた坂口さんに宇津木さんとのやり取りを暴露する。

「宇津木の突然ぶりは、今に始まった事じゃないし……」

「無茶苦茶すぎます……」

 封筒の中身はレジャー施設程の大口ではないけれど、そこそこ常連様のお仕事内容で……

 普通、あんな軽いノリで扱える仕事じゃあないと思うんだ。

「宇津木氏は、昔っからああだったんですか?」

「うん。昔っから唐突な奴だったよ。でも……昔よりは丸くなったんじゃないかな。よく有野さんに注意を受けていたよ?」

 昔よりは丸くなったって……

「どれだけ尖っていた訳ですか」

「え? 別に反抗してた訳じゃないんだけど……?」


 頭の中で、上司に盾突いている宇津木さんを想像した。


「……………」


 熱くなっている奴は、あまり想像しにくい。

 逆に、ニヤニヤしながら淡々と意見している奴の方が想像しやすかった。


「一つ聞いてみてもいい?」

 坂口さんは、サンドイッチを手で弄びながら、少しだけ遠慮がちな笑顔。

「神崎ちゃんって、本当に宇津木を嫌ってるの?」


 あったり前じゃないですか!!


 すぐ手が出るし、たまに足も出るし、首は絞められるし、嫌な事ばっかり言ってくるし。

 ……嫌な言葉の三分の一くらいは、ちょっとこっちも悪いかも知れない。

 でもモノは言いようで、言い方ってモノがあるじゃない?


 いや……

 もしかするとあの人は、単に言葉が悪いだけか。


 それを言ったら、私も人の事は言えないくらいに悪い。

 だとすると、宇津木さんもなかなか苦労してるのかも知れない。

 私もたまに佐和子に怒られるし、直せとも言われてる。


 ……だからと言って今更、佐和子みたいにおしとやかに丁寧になんてなれないし。

 そういや佐和子と言えば、最近はメールも電話もくれないけど、どうしたんだろう?

 飲みに行って、突然帰って。

 佐和子は有野さんと同じ部署だけども、明らかに逃げたよね?

 喧嘩したとは言っていたけど、当事者の有野さんを見るからに何も気にしてないみたいだったし。
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