くるまのなかで
高校時代、先に告白したのは私の方だった。
だから、もし、また奏太と特別な関係になれるのなら、今度は奏太から言ってもらいたい。
『梨乃のこと、そういう目で見てる。これから梨乃を誘う時は、そういう期待を込めて誘う』
なんて言われてしまったから、内心かなり期待してたんだけど……。
私、焦りすぎなのかな。
ブブッ―—
テレビもつけていない独り住まいの静かな部屋。
携帯電話が震えたので、驚いて私の身体も震えた。
LINEだ。
送信元の欄に『徳井奏太』と表示されているから、続いて私の心も震えた。
『明日の仕事は何時頃終わりそうですか?』
明日、ですか。
珍しく敬語ですね。
『明日は休日です』
送信。
きっと何かのお誘いなのだろう。
ドキドキしながら携帯を握りしめている自分の姿が姿見に映っていた。
何この顔。
全然シャープなんかじゃない。
力んでガチガチだし、不安を帯びて歪んでいる。
ブブ、と再び震えたので、視線をディスプレイへ。
『デートにお誘いしたいのですが、夜になっても構いませんか?』
そんなの、奏太が相手なら何時だって構わない。
『構いませんよ』