くるまのなかで

玄関で靴を履いて待っていると、シルビアのエンジン音が聞こえたので外に出た。

アパートの階段を下り、路肩に止まった車に駆け寄る。

電話をかけようと携帯を操作している奏太の顔が、暗い車内で光を反射している。

彼が私に気づくよう、あえてヒールの音を響かせた。

顔を上げた奏太が私を見て微笑む。

その表情に、胸がキュンと詰まる。

「お待たせ」

「ううん。今日もお疲れさま」

ライトブルーのデニムシャツにベージュのチノパンを合わせたキレイめなスタイルが、今日もよく似合っている。

捲った袖と腕のバランスもすごくいい。

枕木チーフのように造形だけが美しい男とは一線を画するカッコ良さが、奏太にはある。

いや、もちろん、一般的に見ても奏太はカッコいい方に属すると思うのだけど。

……モテるんじゃないかなぁ。

私なんかとは違って。

車に乗り込みドアを閉めると、外の音が遮断されて一気に二人きりの空間が出来上がる。

これはデートなんだと思ったら、意識しすぎてどんな顔をしていいかわからない。

シルビアはゆっくり走り出した。

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