くるまのなかで
覚悟を決めた瞬間、奏太が私を抱きしめる力を強めた。
ちょっと苦しいくらいに締められ、不意に濁った呻き声が出た。
「奏太?」
「……ごめん」
私の肩に頭を乗せ、そう呟いて深く息をつく。
ふと腕の力が弱まり、滞っていた血が巡り始める。
ドクドク大袈裟に脈を打つ体。
奏太の体からも、私のとは少しテンポの違う脈を感じた。
「どうしたの?」
「年甲斐もなく、サカッた。今の俺は危ない」
「年甲斐って……ははっ」
照れもあって、思わず笑ってしまった。
年甲斐もなくサカッたのは私も同じだ。
28にもなって、奏太とひとつになれるならどこでどうなってもいいと、後先考えずに思ってしまった。
私だって十分危ない。
愛しさが増して、目の前にある彼の首筋にキスをする。
奏太はピクッと震え、頭を上げた。
「やめろよ……。治まらなくなるだろ」
「ごめん。でも、年甲斐もないのは私も同じなの」
「こんなところでしたくない。梨乃とは、もっとちゃんと、ゆっくりじっくり、がっつりしたいんだよ。俺は」
「がっつりって、もう」