くるまのなかで
奏太と夜景を見た翌日。
直属の上司、チーフSVである枕木賢司は、出社した私の顔を見るなりこう言った。
「うわ、キモッ」
仮にも女性に対して、何という口の利き方だ。
まったく、親の顔を見てみたい。
「チーフ、それは私にセクハラで訴えてほしいというアピールでよろしいですか?」
口が悪いにも程があるこの男は、私の嫌味などお構いなしに追撃してくる。
「いーや、今日のお前の顔は酷い。訴える前に何とかしてこいって」
「生まれ持ったこの顔は交換できません。それとも、整形代でも出していただけるんですか?」
「そうじゃねーよ。顔が緩みまくって超ブスになってんぞ」
「ブッ……」
ブスだと?
そりゃあ私は美人とはいえないかもしれないけど、自分がイケメンだからって面と向かってブスはなくない?
マジで訴えてやろうか。
さっきのセリフ、録音しておけばよかった。
センター内に録音機器を持ち込めないのが残念でならない。
もしやこの男、それをわかってて好き放題言っているのではあるまいな。