くるまのなかで

私の父親だって、そんな男のうちの一人なのだと思う。

家庭のある既婚者だったのだろうか。

責任など取りたくなくて逃げたのだろうか。

私は認知すらされていない。

流されやすい母は、一度に複数の男と付き合っていたことが何度もある。

もちろん娘の私にそうとは言わなかったが、幼くとも察していた私は、モヤモヤした気持ちで見守っていた。

もしかしたら彼女自身も、私の父親が誰であるか確信が持てなかったのかもしれない。

いずれにしろ、私はバカでビッチな母と下衆な男の間に生まれた子である。

だから恋愛に向かないのかもしれない。

男と暮らした経験がないため、結婚生活とか温かい家庭というものも、いまいちリアルに想像できない。

私はきっと、結婚にも向いていないと思う。

でも、奏太となら。

奏太となら、きっと大丈夫。

根拠はないから願望に近いかもしれないけれど、奏太となら、健やかなるときも病めるときも、喜びのときも悲しみのときも、富めるときも貧しきときも、彼を愛し、彼を慰め、彼を助け、彼を敬い、私の命のある限り、真心を尽くせる気がするのだ。



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