くるまのなかで
「枕木チーフにそう言われると、いい感じにキモいですね」
「安心しろ。もう二度と言わねーから」
“まあまあ”か……。
由美先輩は、今でも変わらず“とても”キレイだった。
女として、由美先輩には敵わない。
あんなキレイな奥さんがいるのに、どうして。
「どうして男って浮気したがるんですかね」
奏太はそういうタイプじゃないと思い込んでいたけれど、結局私の願望に近い勘違いだった。
「さあ。俺はしないからわかんねーな」
「騙される女を見るのって楽しいんですかね」
「お前、俺の言葉信じてないだろ」
「カッコいい男の言葉なんて、もう信じませんよ」
私の言葉に苦笑いをしたチーフは、お揃いのミルクティーを一気飲みして立ち上がった。
「確かに、小林にそう言われるといい感じにキモいわ」
「安心してください。もう二度と言いませんから」
私も缶を空にして、立ち上がる。
絶対に口には出さないけど、いつも私を気にかけてくれているこの男に、少しくらいは感謝しようと思う。