くるまのなかで
翌日、午後4時半。
入電が落ち着いたタイミングで枕木チーフにセンターを任せ、休憩に入った。
ロッカールムを出てすぐの休憩室に入ると、先に休憩に入っていた清香先輩が、獲物を見つけたとばかりに声をあげた。
「コバリノ! 聞いたよ!」
先輩は私の腕をグイグイ引いて、椅子に座らせる。
自身もテーブルの向かいの椅子に座った。
4人掛けの丸テーブルを二人で贅沢に使う。
「聞いたって、何をです?」
「奏太とのことだよー。また付き合うことにしたんでしょ。あたし、絶対そうなるって思ってたんだぁ。よかったー」
清香先輩は相変わらずの高い声で、とても嬉しそうに捲し立てた。
奏太の名が聞こえた瞬間、私は肩をビクッと震わせた。
残念ながら、彼の名を聞いて喜べる事態ではないのだ。
「それ、誰に聞いたんですか?」
「タケだよ。電話が来たの。二人でタケのお店、行ったんだって?」
「はい。行きました。すっごく美味しかったです」
美味しかったけれど、すでに苦い思い出だ。
「タケも嬉しそうに話してたよー。奏太本人から報告があったって」
ふーん、奏太本人から……。
ていうか、おかしくない?
奏太、結婚してるのに、二人とも知らないの?