くるまのなかで
「どうして私に隠してたの?」
せめて事前に話してくれていれば、こんなに傷つかずに済んだのに。
「ごめん。由美だって女だし、子連れだし。一緒に住んでるなんて知られたら、梨乃に警戒されると思って。どうしても梨乃には俺を見てほしかったから、チャンスを逃したくなかったから、梨乃にとって俺を選ぶのに障害なりそうなことは極力なくしたくて、黙ってた」
私を好いているから……。
でも、騙していたことには変わりない。
腹立たしい気持ちと嬉しい気持ちが混ざり合って、胸の中がドロドロしている。
怒る気は薄れたけれど、素直に喜ぶこともできない。
「俺たち、前に宇津木社長が住んでた戸建てに住んでる。由美が戻ってきたとき、社長がマンションに住み替えたばかりで、ちょうど空いたから借りることにしたんだ。一緒に住んでるって言っても、由美にはカズのついでに飯とか洗濯をやってもらってる程度」
「嘘。奏太、仕事終わってから夜9時くらいまで、連絡取れないじゃん。二人との団らんの時間なんじゃないの?」
「違う。毎日夜まで連絡取れないのは、そういうことじゃない」
「じゃあ何なの?」
奏太は眉間にシワを寄せて口をつぐんだ。