くるまのなかで

『経済学部 経営学科 夜間主コース』

と書かれている下に、奏太の学籍番号や氏名が書かれている。

私は昼間コースだったけれど、学部も学科も私が卒業したところだ。

カードの右側には、真面目な顔をした奏太の写真がプリントされている。

この大学では、夜間主コースの講義は、午後6時から午後9時10分まで行われている。

それから車で異動して、この会社に着くのは大体午後10時頃。

高速道路を使って時間を短縮しても、午後9時半を過ぎる。

迎えに来てくれていた頃やタケ先輩の店に行った日と照らし合わせてみても、辻褄が合う。

「なんで、大学なんか……」

勉強、嫌いだったくせに。

高校時代、私が『大学進学は考えたことないの?』と聞いたら、『俺には必要ない』って言ってたくせに。

「社会に出てみて、自分がいかに勉強してこなかったか、思い知らされてさ。当時は何の意味もないと思ってたものが、実はすげー人としての質を左右するってわかって、学のなさを恥ずかしいと思うようになった」

「それで、勉強して受験したの?」

この地域で最も悪名高い東峰学園高等部の、不良グループの元リーダーが?

この地域で最も権威があると名高い大学に通ってるの?

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