くるまのなかで
別れた数日後、私のために怒ってくれた清香先輩に、結局奏太とは別れたことを報告した。
清香先輩は残念そうな顔をしたけれど、
「そうだよね。好きな人が家族でもない女と住んでるなんて嫌だよね」
と共感してくれた。
彼女が「そうだよね」と言ってくれて、ホッとした。
別れを決意したのは正しかったのだと安心した。
奏太は私を好きだと言ってくれたのだから、信じた方がよかったのではないか。
由美先輩とは何もないと言っているのだから、一緒に暮らしていることには目をつぶって関係を続けた方がよかったのではないか。
奏太を失った寂しさのせいで、こんな考えが頭に浮かび、別れを後悔しかけていた。
だけど、それでは結局後悔する。
たとえ亡くなった親友の愛した人であったって、いろんな事情があるからって、自分の恋人が女と暮らしているなど、不愉快きわまりない。
「まったくさー、由美も由美だよ。奏太を頼るなんて、非常識」
「私もそう思います」
あの日の奏太の表情を思い出す。
きっと、奏太の方から由美先輩に手を差し伸べたに違いない。
だから余計に彼女たちを追い出せないのだ。
「いつか由美に会ったら、あたしから出て行けって言っとくからね」
「あはは。大丈夫です。もう奏太とは別れたんだし、関係ないので」
清香先輩がうちの職場に来てくれてよかった。
心強い。