くるまのなかで

「私なんかのどこがよかったの?」

由美先輩と並べられたら、どう考えても見劣りする。

それでも私を選んだ奏太に尋ねてみると、私とベッドに寝転んでいる彼は、私の顔をまじまじと見つめて告げた。

「どこって聞かれると難しいな。全体的に、かな」

「全体的って、よくわかんないよ」

「全体的に、かわいいとこ」

「……ますますわかんない」

高校時代の担任に『シャープな顔立ち』と称されたキツめの顔に、短い髪。

服だってマニッシュでトラッドなものばかり。

この私の、どこがかわいいというの?

そういえば前に枕木チーフにも“男にとっちゃかわいい”とか言われたっけ。

悪い気はしないけれど、全然理解できない。

「梨乃は、わかりやすいところがかわいい。怒ってるとか、喜んでるとか、俺のこと好きとか。顔とか態度に大体出る。そういうとこが一番かわいい」

「えっ……」

そんなに顔に出てるの?

そういえば、会社でも何度か指摘されたことがあるっけ。

単純バカみたいで、ますます恥ずかしい。

「ツンデレじゃないけど、顔とのギャップっていうか。素っ気なさそうな顔してるのに意外と表情豊かなとことかね。今日みたいに梨乃に甘えられると、男としては、たまらないわけですよ」

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