くるまのなかで
STVさぽーとこーるでは、雇っているコミュニケーターの100%がパート・アルバイトである。
年齢層は20代から60代と幅広いが、大体のメンバーが主婦で、バイト掛け持ちのフリーターやダブルワークの人もいる。
「小林さん、すみません。明日、お休みをいただけませんか?」
正直なところ、コミュニケーターからのこの言葉が、私には一番辛い。
「えっ……明日ですか?」
シフトは先月のうちに希望を取り、クライアントから要求されている応答率や予算、そして日ごとの予測受電数を考慮し、計算し尽くして組んでいる。
それを今日の明日で“変更してくれ”とか“休みにしてくれ”と言われると、結構ヘコむし面倒な作業ががっつり増えてしまう。
「本当にすみません。息子の学校に呼ばれてしまって……」
それでも主婦に「子供が」などと言われてしまうと、私は何も言えない。
だって誰も悪くないし、仕方がない。
どんなに大変でも、面倒でも、彼女の穴を埋めるのは私の仕事なのだ。
「そうですか、わかりました。何とかします」
「すみません、いつも急で……」
「仕方ありませんよ。お子さんのためですもの」
笑顔でそう答えて、先月提出してもらった勤務希望表のファイルを引っ張り出す。
そこから明日の日付のところに勤務可能のマークを書いているメンバーをピックアップし、その中で元々明日出勤になっていない人に電話をかけていく。
「すみません、明日はもう予定を入れてしまいました」
「遅番ですか? すみません、早番ならいけたんですけど、遅番は無理です」
今日の明日だと、なかなか人材が決まらないことも。
それでも何とかするのが私の仕事である。