くるまのなかで
奏太はそれから20分くらいかけて、修理の内容とかかる費用について細かく説明してくれた。
その後ササッと事務所で見積書を作ってくれて、作業依頼書にサインを求められた。
改めて、真面目になったもんだなぁとしみじみ思う。
高校時代にはこんな奏太、想像もできなかった。
授業のノートすらまともに取っていなかったのに、専門的なことをたくさん教えてくれた彼は、きっとたくさん勉強をしたのだと思う。
こんなに真剣な顔をして何かを説明したり、パソコンに向かったりするのを見たのは初めてだ。
奏太の働く姿がこんなに素敵だなんて知らなかった。
見た目だけでなく、中身もしっかり大人になったんだなと実感する。
胸がまた、じくじく焦がれていく。
不良だった元カレが更生して夢を叶えて、付き合っていた頃よりもカッコよくなって再会。
「これは一体何のドラマだ!?」と、ツッコみたい。
私は、どうなんだろう。
“大人の魅力”みたいなものは、醸し出せているのだろうか。
アラサーと呼ばれる年齢になって「劣化した」とか思われていないだろうか。
「じゃあ、帰ろうか」
「うん」
明かりを消して、施錠して、再びシルビアに乗り込む。
助手席の窓から空を見上げると星が輝いていた。
もし星が流れたら、こう願おう。
奏太とまた特別な関係になれますように。