くるまのなかで
翌々日、いよいよこの日が来てしまった。
携帯電話を片手に、私は小さくため息をついた。
ディスプレイにはこう表示されている。
『車の修理が完了しました。今夜乗って帰れるよ』
奏太から送られてきたメッセージだ。
その下に、名前も知らないキャラクターが親指を立ててにっこり笑っているスタンプが添えられている。
『わかった、ありがとう』
という文に加えて、感謝の意を伝えるためのスタンプを添えておく。
ホームボタンを押して、メッセージアプリを閉じた。
奏太のお迎えは今日が最後になる。
車を受け取ったら、次に壊れるか異常が出るかしないと、彼に会う理由がなくなってしまう。
どうしたら奏太との繋がりを維持できるだろうか。
どうしたら、これからも会えるだろうか。
考えながら携帯電話をバッグに収め、ロッカーを閉める。
それと同時にセンター側の扉からピピーッと電子音が鳴った。
直後、がちゃりと扉が開く。
条件反射でそちらを向くと、ダルそうな顔をした枕木チーフが出てきた。
チッ……と、心の中で舌打ち。
表面的には笑顔を見せる。
「お疲れ様です。休憩ですか?」
「お疲れー。休憩っつか、トイレ」
「そうですか」