くるまのなかで
私はかつて、優等生だった。
中学時代はこの地域で一番の進学校に合格確実だと言われていた。
しかし家庭の事情を考慮し、学費免除という条件をくれた東峰学園高校の特進クラスへ入学。
高校では必ず成績上位5位以内で、生徒会長まで務めた。
推薦書をもらい、AO入試で国立大学に合格。
久々の快挙だと、学園はとても喜んでくれた。
大学は入学してみると、とても不思議なところだった。
厳しい進学校で規律に締め付けられた高校生活を送ってきた同期生たちが、ゴムに弾かれたようにチャラチャラしていく。
高校でチャラチャラ遊んでばかりいる人々を見慣れていた私にとって、入学したばかりの時期は、彼らの慣れない茶髪や金髪、下手なメイクや悪ぶった言動が目に余っていたけれど、こと学力においては頭が下がるほど優秀なのだ。
私にできないことを、ごく自然に、当たり前のように、サラッとこなす。
実力で入学してきた同期生たちと私との間には、圧倒的とまでは言わないが、歴然とした能力の差を感じた。
考えてみれば当然だ。
彼らは実力をもって正当な学力検査を受験し、この大学の学問に十分対応できると認められて入学した者たち。
かたや私は、その学力検査で入学できるほどの実力がないため、大袈裟に褒めちぎられた推薦書、そして口先だけの論文と面接で無理矢理入学した身である。