くるまのなかで

「うん」

『明日は土曜だよ。俺、休み』

「え、明日ってもう土曜なんだ」

今日が金曜日だって忘れてた。

自分が土日休みの仕事じゃないから、曜日感覚が麻痺しているようだ。

『そう。だから時間については心配無用です』

「あ……そっか」

宇津木自動車は土日祝日が定休日だ。

最初にそう聞いた時は整備工場もサービス業のようなものだと思っていたから意外に思ったけれど、土日祝日は陸運局や契約している企業も休みだから、それが普通なのだという。

仕事は基本的に得意先や常連客からの依頼ばかりで、私のような飛び込みの一般客は滅多に来ないのだとか。

耳元で聞こえる奏太の声にドキドキしながら、車で入りやすいファミレスで待ち合わせることを決めて終話。

静まり返った車内に、自分の強い脈拍音が聞こえる。

これから奏太に会える。

すごく嬉しい。

仕事終わりにこんなにウキウキするのは初めてかもしれない。

奏太から誘ってくれた、よね、一応。

勘違いはしたくないけど、少しくらい、期待していいのかな。

すでにどっぷり恋に落ちてしまっている私ほどではなくとも、脈はあるのだと。

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