くるまのなかで
「いらっしゃいませ。おふたりさまですか?」
店に入ると、やる気のなさそうなウェイトレスに迎え入れられた。
「あ、はい」
対応は奏太がしてくれる。
「おタバコはお吸いになりますか?」
「いいえ。あ、梨乃は?」
「ううん、私も吸わない」
禁煙席に案内され、窓際の席に座る。
しっかりラミネートされたメニューを開いて、以前来た時とはずいぶん変わったラインナップに驚く。
注文の目星を付けて奏太はどうかと顔を上げると、真正面の席で頬杖をついている彼とバッチリ目が合った。
次の瞬間、彼がぷっと吹き出す。
「え、なに?」
「あーいや、ごめん。梨乃だなーと思って、見とれてた」
「みとっ……何言ってんの」
顔がかあっと熱くなる。
ずっと見てたの?
私、気を抜いて変な顔してなかったかな。
「俺、制服着てた頃の梨乃しか知らなかったからさ。久しぶりに会った時は、服とか化粧で大人になったなーって感じたんだけど。でも何度か会ってそれも見慣れて、改めて見るとあんまり変わってないなって思って」
照れて視線を逸らすようにメニューを見下ろした奏太。
お返しとばかりに私もその様をじっと見つめる。