くるまのなかで
「そりゃあ変わらないよ。私、整形とかしてないし」
「ははは、そうだよな。変わってる方がおかしいか」
「でも、奏太は結構変わったよね。髪型も違うし、服の感じも変わったし。あ、顔の印象を変えたのは眉の形かな。それと、体つきも昔よりがっしりしてる」
思いついたことをポンポン口に出しているうちに、奏太はだんだん恥ずかしがる顔になった。
「梨乃、人をよく見てるなぁ」
関心しているようだけどそれは違う。
付き合っていた奏太だからこそ違いがわかるだけで、他の人のことなんてきっとわからない。
「そんなことないよ。奏太が変わり過ぎてるの」
「そうかな?」
「そうだよ。再会してみて、いろいろ意外だった」
「例えば?」
「もっと厳つい大人になってると思ってたの。なのに実際会ってみると、高校時代よりずっと爽やかだし、タバコも吸わないし。東峰の不良代表だったのに、元ヤン感、ほぼないよね」
そういえば高校時代。
奏太は私と付き合うまでは隠れてタバコを吸っていたけれど、私が「タバコのにおいは苦手だ」と言ったらすぐに吸うのをやめてくれた。
本当は吸いたいのだと思っていたから、本当に意外だ。
「タバコはこっちに戻る前までは吸ってたけど、戻ったのを機にやめた。体に悪いし、財布にも悪いし」
「ふふ、そうなんだ。だんだん高くなってるもんね」
「うん。おかげでキレイな体になりました」