くるまのなかで
意識を高く持つ。
SVとして、高いレベルで仕事をする。
急に優等生にはなれないけれど、できることから少しずつ。
まずは自分の仕事に余裕を持とう。
追われてばかりでは仕事の質を上げられない。
私生活だって楽しめない。
せっかく奏太が私を恋愛対象だと言ってくれたのだ。
ただでさえ休みが合わないのに、仕事に追われて会えないなんて嫌だもんね。
高校時代はずっとそう思って生活していた。
勉強、委員会、生徒会。
それから突発的に降り掛かってきたコンクール用の読書感想文の校正や英語のスピーチコンテスト出場の依頼。
することはたくさんあったけれど、できるだけ早く終わらせようと頑張っていた。
モチベーションは奏太に会うことで保っていたし、奏太に会う時間を確保するために最善を尽くしていた。
10年経った今、再びその感覚がよみがえってきている。
いい感じ!
「梨乃ちゃん、最近全然顔が違うね」
奈津さんの指摘に、入電待ちのコミュニケーターの面々もうんうんと頷いた。
「え? 顔ですか?」
奏太に少しでもキレイだと思われたくて、この間の休みにちょっとお高い美容液を買ってしまったのだけれど、その効果が出たのだろうか。