くるまのなかで
STV本社には、私がさぽーとこーるのSVを勤めることになった半年前に、2週間みっちり通って研修をしてもらって以来だ。
今回の研修は7月の初旬に一日だけ。
平日の午前9時から午後5時までである。
シフトを確認すると私の休みと重なっているため、その週の日曜日に代休を取ることになる。
ただし、本来の業務が順調に終わっていなければ休日出勤することになるが。
「うわ、どうしよう。すっごく久しぶりに日曜休みです、私」
普段はほぼ平日にしか休めないため、テンションが上がる。
「やったね梨乃ちゃん。土日祝日に休めると嬉しいよね」
「はい!」
奈津さんも同じく土日祝日には休みが取れない。
旦那さんは土日祝日休の仕事をしているので、なかなか家族と遠出ができないと嘆いている。
サービス業に就く人間の宿命だ。
「あー、何しようかなぁ」
日曜にしかできないことって、何だろう?
実際のところ、平日休みで困ったことはあまりない。
役所や銀行の用事は休みを取らなくても済ませられるし、買い物をする時だって、人気の店でも空いている時に利用できる。
誰かと休みを合わせて出掛ける機会も少ない。
彼氏はいないし、仲のいい友達は就職で全国に散っているため、基本的には大型連休にしか会えない。
「いい加減、彼氏の一人でもできんのか」
わかっているくせに、枕木チーフがバカにする。
相変わらず失礼な男である。
「ご期待に沿えなくてすみませんね」
軽く睨みつけると、チーフは少し嬉しそうに鼻で笑った。