不良の俺とクールな後輩
まだ聞きたいことはたくさんあった。
なんであけたのかとか、どうやってあけたのか、なんで片方なのか
人にこんなに興味を持ったのは初めてで、俺は少し混乱していた。
聞きたい言葉を口にできなくて変な顔をしてたんだと思う。
「気になりますか?」
麻耶がそう言って俺の目を見た。
麻耶はまだ左耳を触っていた。
それが俺に見せたくないって言ってるように見えて
「ああ。」
それでも気になってしまうのは、何かの病気かもしれない。
俺が心の中でため息をつくと、麻耶はまた困ったように笑った。
「ピアスをあけたのは、中2の時です。」
麻耶の声が少し小さくなった。
「彼氏の、真似してあけたんです。」
ドクン……って、俺の中で変な音がなった。
「彼、氏……?」
「はい。」
麻耶はパッと耳から手を離して「内緒ですよ」と言った。
「て言っても、1年ぐらいですぐに別れちゃったんですけどね。
左耳にだけピアスあけてて、それがすごいかっこよく見えて。
今から考えたら単純な話なんですけど。」
だんだん落ち着いてきて、俺はふうっと息をついた。
なんか、心が苦しい。
こんな気持ち初めてで、気持ち悪い。
俺を見て少し笑った麻耶の目は、どこか冷めたような何かを諦めたような、そんな目
初めて中庭であった時と同じ
俺はたまに見せる麻耶のこの目が嫌いだった。