EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ
そんなやり取りの一分後にチャイムが鳴った。
講義時間が始まり、フェオドールがやって来る。
教壇に立つ彼は早速チョークを持つと、馬鹿でかい黒板に綺麗な文字で「薔薇香学」と書いた。
「今日は俺の専門分野である“薔薇の香り”について取り扱う。花といえば視覚的な形や色の美しさの他、香りも重要だ。薔薇に限らず、花の香りには癒し効果をもたらすものが存在するが…」
「フェオの声もいい感じで眠気を誘うよな…」
隣のカロンがあくびを噛み殺す間にもフェオドールの説明は続く。
「たとえば、このピンクの薔薇。これは俺が育てた特殊なやつで、この薔薇の香りを嗅ぐと幸福な気持ちになれる。一種の癒し効果だ」
フェオドールは手の平サイズの小さなガラスケースに入った花びらを持ち上げて見せた。
「それに対して、この黒薔薇は香りを嗅ぐと負の感情が渦巻くようになる。俺が実験に実験を重ね生み出した香りの効果だ」
「ろくな実験じゃないよね」
ボソッと零れた白魔の独り言をオーレリアンが拾って言い返した。
「兄様の実験を馬鹿にするな!兄様以外、誰もあれを成功させた研究者はいないんだぞ!」