EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ

「やめて!!やめて下さい!私、ルカさんとの思い出まで消したくないです…!」

「えっ…?」

「ルカさん、私と一緒に遊んでくれましたよね?私、嬉しかったんです!あんなに楽しかった思い出…忘れたくない…!」

必死で忘れたくないと訴える小鳥を前に、ルカは困惑した表情を浮かべた。


「……小鳥、わかってる?俺は君のお父さんを殺したんだよ?」

「わかって、ます…けど……忘れたくないです…!」


人を食す闇人にも、人間と同じ「心」がある。

なら、彼らの心を信じてみたい。


(ただちょっと不器用なだけなんですよね…?優しさの伝え方に、慣れてないだけなんですよね?)


彼女の内なる問い掛けをルカが察したかはわからない。

が、白薔薇はポトリと地に落ちた。

何も持たない両手で、ルカは小鳥を抱きしめる。


「ホントは…俺……小鳥の記憶、消したくなかった」


ルカにとっても、あの思い出は大切で。


「忘れてほしくなかったんだ…。俺のこと……だから」



――ありがとう



「忘れたくないって言ってくれて、嬉しい…」



しばらくの間、二人は涙しながら優しい風を頬に感じていた。




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