EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ

身体も心も血も魂さえも貪りつくそうとする彼は、もはや恋人でも何でもない。

ただの狂った獣だ。


「……堪えた後も、君は今みたいに微笑んでいられるだろうか」


他の女性達と同じように喚いて罵って離れていくのではないか。

なんせ、この吸血行為は甘美とは程遠いのだから。

吸われる側はひたすらに痛みしか感じない。

吸血されるのが初めてではない小鳥は、その苦痛を知っているはずだ。


けれど、赤薔薇によって目の前の闇人へ最上級の愛を捧げる少女は言う。


「大丈夫です、フェオさん。私は……大丈夫」



――私は貴方を裏切りません



愛に飢えた獣には、そう聞こえた。


(これが偽りの愛情であることは、わかっている…)


わかってはいるが、フェオドールは誘惑に負けて小鳥の首を支え、腰を抱いた。







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