EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ


 薔薇の香りが小鳥の意識を朦朧とさせる。

噛み付かれ、吸い出され、瞳には涙が溜まった。



「ハァ…」

満足したのか、フェオドールが牙を抜く。

身体に力が入らずグッタリとした小鳥を優しくソファーに寝かせ、涙に濡れた彼女の頬を撫でる。

目を閉じかけていた小鳥だったが、フェオドールの手の温もりを感じて瞼を上げた。

「フェ……オ、さ…」

「すまない。大丈夫か…?」

恐る恐る問い掛けると、小鳥は泣き顔のまま笑った。

「は、い…。私は、大丈夫です」

ズキズキと襲いくる痛みに堪えながら頑張って声を出す。

そんな小鳥の姿がフェオドールの心をくすぐった。


「いじらしいな…」


これが本物の愛情からくる微笑だったらどれほど良かったか。

フェオドールが苦笑とも自嘲とも取れる微笑みを浮かべた時だった。


鋭い殺気。

空気を切る音と共にナイフが飛んできた。

小鳥、目掛けて。


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