EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ
彼の腕から逃れ、手当てをしようとした月那だったが、不意に氷河から名前を呼ばれて動きを止めた。
「月那……」
「はい?」
「覚えているか…?お前が…“俺に殺されるなら本望”と言った、あの時を…」
昔、月那が人間だった頃に言ったセリフ。
「……覚えてますよ」
「そうか…」
氷河は傍にあった椅子に身体を預けた。
「櫻井小鳥は……あの時のお前と、同じ目をしていた」
吸われる瞬間、微笑んでいた少女。
月那も微笑みながら氷河に全てを差し出そうとした。
「お前と少し……似ているな」
「仲良くなれそうですか?」
「……人間でなければな」
「人間でも仲良くなってほしいです」
「……お前、恋人に他の女と仲良くしろって言うか普通。……少しは嫉妬しろ」
「へへ、氷河さまの愛情を信じてますから」
無邪気に笑う月那に毒気を抜かれた氷河は力無く苦笑した。