EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ
「大丈夫?怪我は?」
「大丈夫ですよ。それより、ごめんなさい。お皿、割っちゃいました…」
床に落ちた皿を見つめてしゅんとする。
「気にしないで。小鳥に怪我がなくて良かった」
ニッコリ笑顔を作ると、ルカは散った食器の破片を集めにかかった。
「あっ、手伝いますね」
「いいよいいよ!危ないから小鳥は――」
言った瞬間だった。
「っ…!」
割れた食器を触った小鳥の指先に紅の筋が走った。
切った、と思った数秒後、じんわり痛みがやって来る。
「あ……やっちゃった…。ルカくん、絆創膏ってどこに――」
言いかけて小鳥は息を呑んだ。
ルカを見れば、魅入られたような表情でこちらを凝視している。
「血……小鳥の、血…」
「ルカくん…?」
そっと、傷ついた指にルカの手が触れる。
彼の青い瞳がギラリと異様な輝きを見せた。
その目には指先の赤しか映っていないようだ。
「ルカくん?どうしたんですか…?」
問い掛けても無視される。
否、ルカには聞こえていないのだ。
指先に彼の唇が近づき、吐息がかかる。
「ルカくん!!」
傷口を舐められそうになった瞬間に大声を出したら、ビクリとルカの身体が震えた。
「っ…!あっ…ゴメン!」
我に返り、バッと身体を離す。
「ば、絆創膏、だね!今持ってくるから、待ってて!」
焦ってキッチンを飛び出したルカはバタンと扉を閉めてから立ち止まり、深い溜息を吐き出した。
「………ヤバかった」
まだ甘い血の香りが鼻をくすぐっている。
魅惑的なそれを振り払うようにルカは頭を振った。