EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ
苦痛に堪えるような表情をする小百合。
その顔がどこと無く白魔に似ていて、小鳥は無意識にこんな質問を口に出していた。
「白魔さんのこと……少しも愛していなかったんですか…?」
「………憎らしい相手との子ですから」
小百合の手が微かに震える。
「遠ざけることしか………できなかった」
「え…?遠ざける…?」
「あの子は人ではない…。その事実が悲しくて…辛くて……赤子の時に何度この手で葬ってやろうとしたことか…」
目を閉じて、彼女は懺悔するように心にある真実を語った。
「けれど……できなかった。できなかったのです」
「なぜ、ですか…?」
フッと小百合の表情が和らぐ。
ほんの少しの自嘲を混ぜて彼女は笑った。
「……私も、我が子が可愛かった。半分はあの悪魔の血が混じっていようと、あの子は私の子ですから」
――ははうえ!
そう呼び掛けられるたびに感じた、嬉しさと憎らしさ。
「殺してやりたいのに殺すこともできない。それなのに、顔を見るとあの子に刃を突き付けてしまいそうになる…。ならば……いっそ…」
心を傷つけて――。
「酷く罵ることで…あの子が私を嫌ってくれればと……」
嫌いになれば、もう自分には寄って来ないだろう。
白魔はそれ以上、傷つかなくて済む。
「愛してるからこそ、私から遠ざけることが……あの子への精一杯の愛情でした」