EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ
そしてそれは、小百合が葛藤の苦しみから逃れる唯一の手段でもあった。
「……けれど…無駄でしたね。あの子は馬鹿みたいに私を慕った。あの日も……私に会いに来たのでしょう」
「あの日…?」
「私が死んだ…あの日です」
地下の屋敷では小百合の精神がもたない。
それを察したジェラルドは地上に屋敷を構え、小百合をそこに住まわせた。
窓から見える外の景色は小百合に慰めを与えたが、徹底した監視のもと、自由がない。
まるで囚人――。
「殺してくれ、と…頼んだのです。ジェラルドに。……きつく反対されましたが、最終的に悪魔はひとカケラの憐れみを持って私に安息を与えてくれました」
首筋に牙を立てられ、死ぬまで血を吸われ続けた。
「吸われる肩ごしに…見えたのです。扉の隙間から、泣きそうな目で私達を見つめる、あの子が…」
その光景を、少年だった白魔はしっかりと目に焼き付けた。
それからだ。
彼が父を憎み、純粋だった心を歪ませていったのは。
「私は、貴女まで私のようになることを危惧しています。心を追い詰められる前に……命を奪われる前に…早くお逃げなさい」
「っ……ルカくん達は、そんなことしません…!私は、逃げません」
言い返す小鳥の瞳を小百合はジッと見つめた。
「……忠告はしました。後は貴女次第。有限なる生の中で、どう生きていくのか…よくお考えなさい」
草原に風が吹く。
小百合の長い髪がサラリと揺れた。
「……あの子は…達者にしていますか?」
「はい…。白魔さんは、お元気です」
「そう…。それは…良かった」
優しい母親の微笑。
それを最後に、小鳥の視界は霞んでいった。