EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ
先程白魔に投げつけられたナイフを拾い上げ、それに付着している小鳥の血をペロリと舐める。
(ルカ、くん…?いつものルカくんじゃ…ない…?)
クツクツと喉で笑いながら、ルカはゆっくり白魔に近づいた。
「どけよ」
「ん…何さ。ルカ」
「俺が吸う」
(え…!?)
ルカの言葉を聞き、愕然となる小鳥。
「もう我慢とか無理。いい加減、限界」
「ルカに殺させないよ。小鳥を殺すのは僕さ!」
「殺すとか殺さないとかどうでもいいからさ……吸わせろよ」
狂気の香りをまとったルカが迫ってくる。
「いや…!来ないでっ!ルカくん!」
「ああ……たまらないよ…小鳥の香り」
目の前にはルカ、背後には白魔。
逃げられない――。
「や、やめてっ…!ルカくん!」
「ん…」
乱される胸元。
ルカの唇が小鳥の肌を滑る。
そして、次の瞬間。
「いや!いやああぁあ!!!!」
腰を抱えこまれた状態で柔らかい胸にルカの鋭い牙が埋められた。
「んっ……小鳥…」
ジュルジュルと勢いよく血が啜られる。
「やっ……」
(これは…現実、なの…?)
ルカに与えられる痛みと彼の吐息を胸元に感じながら、小鳥は現状を受け入れられずに涙をこぼした。
視界が霞む。
それは涙のせいか、はたまた失血のせいか。
確かなことは、ただ一つ。
(殺、され…るっ)
小鳥の生死を握っているのは二人の吸血鬼だという現実。
恐怖のただ中で小鳥は不意に白魔の母親の言葉を思い出した。
――私は、貴女まで私のようになることを危惧しています。心を追い詰められる前に……命を奪われる前に…早くお逃げなさい
(私は……なんて、答えたんだっけ…)
――ルカくん達は、そんなことしません…!私は、逃げません
(わたしは…こたえを……まちがった、の…?)
「…る……か…く」
信じていた。
彼らのことを。
「彼」のことを――。
「ハハッ、ルカ。相当たまってたの?血に狂うなんてさ」
白魔に問われるも、無視。
ルカは夢中で血を吸い続ける。
そんな弟を嘲笑いながら白魔も再び小鳥の首筋に牙を突き立てた。